豊田道倫&His Band

豊田道倫を初めて見たのは山本精一と川本真琴とのライブ（O.A角矢胡桃）で、その日はトークショーもあり、そのトークの中で川本真琴が「自分の恋愛遍歴は全て豊田さんに言ってある。今も豊田さんに恋愛相談に乗ってもらってる」と言っていた。その理由はその日のライブを見るとなんとなくわかって、何度もライブを見るごとによくわかるようになった。豊田さんの曲のなかでは人と人が出会い、別れ、また出会い続けてる。それは風景や時代を描写する歌詞のなかにも人がいて、生活をして、恋をしたりしている人たちの息づかいが聞こえるような歌たち。ライブを見て、豊田さんは身勝手なセンチメンタルを描かせたら日本一だ、という感想を抱いたことがある。かつて出会い、恋人をし、やがて通り過ぎた人が今でもどこかで自分のことを愛してるのではないか？という期待が見当違いだったと分かったときに胸に訪れる痛み、自分自身も変わった事を棚にあげて浸る身勝手なセンチメンタル。勝手に期待して、身勝手に傷ついて、大人のフリしてごまかした子供の恋。そんな人生の恥部を記憶の果てから掘り起こされ、分かってもらえたような気になる。そんな恥ずかしくてみじめな姿でも歩いていい街が豊田さんの歌の中だけにある。